天空の楽園、扇が鼻花・はな・ハナの山旅登山


開催日 2001.6.13(水)小雨
場 所 扇が鼻・岩井川岳(大分県)
参加者

4名
福岡支部【しげ、ゆう】
宮崎支部【水流渓人】
北九州支部【山ひとすじ】
コース 牧の戸峠→沓掛山→扇が鼻→岩井川岳→瀬の本登山口

<詳細紀行文>しげ    <写真提供>水流渓人、しげ、山ひとすじ    <HP編集担当>山ひとすじ
 今年もやってきました、ミヤマキリシマの季節。今年は当たり年らしいし期待できそうだ。こうなったらもう行くしかない。先月は京丈山でカタクリを楽しみ、今月はミヤマキリシマを楽しみたい。さっそく花を楽しむ「ひらびこ会」の開催である。
 ひらびこ会の重鎮、山ひとすじさんに連絡を入れて登山する山を検討した。そしてもう一人、ひらびこ会のブレーンである、水流渓人さんとも検討の結果、岩井川岳に決定したのである。コース設定は牧の戸峠から扇ヶ鼻を経て、瀬の本へと至る、初心者向けながらミヤマキリシマや色々な花を楽しむには最適のコースだ。  (右の画像は左からやっさん、山ひとすじ、しげ、水流渓人、ゆう)  


コケモモ
 当日は残念ながら天候が思わしくなく、開催を連絡する掲示板には「少雨決行ガス中止」などと何とも微妙な表現をしてしまったが、集合場所である牧の戸峠に到着してみると意外と視界もよく、平日にも関わらず数多くの登山者で賑わっていた。
 その中に見覚えのある顔が微笑んでいた。山ひとすじさんに水流渓人さん、そしてやっさんだ。9時半集合なのでまだ誰も来ていないぞ、我々(ゆうさんと二人、福岡組)が一番乗りだと思っていたら一番遅く到着してしまった。皆さん行動が早いのだ。
しかも山ひとすじさんは待ち合わせ場所に山から下りてきたらしい。もう既に一山堪能されてきた様子。一体その元気はどこから涌いてくるんですか!?山ひとすじさん。しかもしかも、下山口に車まで用意してある。なんとお礼を申し上げてよいやら。到着早々感激してしまう。
 どこか遠くのほうからカッコーの鳴き声が聞こえる牧の戸峠。わざわざ見送りに来てもらったやっさんに名水をいただき、笑顔で見送っていただいて私達四人は沓掛山を目指した。といってもあっと言う間に到着。雨は心配したほどでもなく、パラパラ程度だ。遠くに由布岳や阿蘇の山々も見えて視界は良好。扇ヶ鼻の山腹にもミヤマキリシマが咲いているのがよくわかる。ここからは心配していた虫の被害がどの程度かわからないものの、ピンク色に染まった斜面が見えて一安心だ。他の登山者に混じって私達四人は歩を進めた。しかし足元にはいろいろな花が咲いており、水流さんの歩みは遅い。「おおーっ、コケモモだあ。」「おおーっ、マイヅルソウだああ。」まるで子供が大好きな虫を発見した時のようにおおはしゃぎで、写真を撮りまくっている。思わず私もおんなじように写真を撮りまくり、なかなか前へと進まない。

            マイヅルソウ

       扇が鼻へ続く天空の花道


 扇ヶ鼻山頂はすぐだった。山頂には数人の登山者がいるだけだ。しかしかなり風が強く吹き飛ばされないようにしゃがみこんでいる人もいた。なかなかの強風だ。パラパラだった雨もパラパラパラとなり、視界も段々悪くなってきた。本格的な雨がすぐそこまで来ている。そそくさとお約束の記念撮影を済ませ、岩陰で小休止ののち岩井川岳目指してひらびこ会一行は歩き始めた。なぜか全員の足取りが軽い。既に心は宴会モードなのか!? いやいや、この先にはドウダンツツジのトンネルが待っているのだ。ドウダンツツジもミヤマキリシマに負けず劣らず素晴らしい花だ。ミヤマキリシマとドウダンツツジの対比が面白い。そんなドウダンツツジの花のトンネルが、岩井川岳へと続く登山道にあった。


        ドウダンツツジのトンネル
 くじゅうの花を楽しむひらびこ会一行は、扇ヶ鼻への分岐へと歩を進めた。山ひとすじさんのお勧めでちょっと寄り道しながら登っていく。風がかなり強くなり被っている帽子が飛ばされそうだ。しかし星生山や久住の斜面にはミヤマキリシマがピンク色の花を咲かせており、我を忘れて見入ってしまう。そしてこれから向う扇ヶ鼻への道はまさに花道である。ミヤマキリシマがこれでもかと咲き誇り、ドウダンツツジが静かに自己主張している。お互いの花が競い合って咲いているようで、見る者の目を楽しませてくれる。花の競演とでも表現したほうがよいかもしれない。先ほどから水流さんは写真撮影に夢中だ。ゆうさんは目がうるうるして感動のルツボといった様子。山ひとすじさんも大満足。私も感動の嵐の中を歩いている。

扇が鼻から久住山方面を望む
 それはまさにトンネルだった。全員またしても感動のルツボである。下から見上げるドウダンツツジの花にしばし言葉をなくした。淡い紅色とでも表現したらよいのか、なんとも奥ゆかしく感じる素敵な色だ。そしてその樹は私達登山者がここに来る以前から、太古の昔から静かにそしてたくましくここに生き続けてきたのだろう。決して優雅に咲き誇っているわけではないのだ。ひとつの生命としての力強さを深く感じるのであった。そのドウダンツツジのトンネルはしばらく続き、登山道はゆるゆると下っていった。自然林の中を降り始めた雨で、滑りやすくなった道に気を付けながら歩いていく。雨の自然林の中を静かに歩いていくのもなかなか趣がある。ふと振り返るとゆうさんが森と一体化していた。
 岩井川岳が目前となったところで昼食を摂ることとした。さっそくリュックをおろしての昼食タイムだ。しかし全員のリュックから出てくるものは酒、ビール、つまみばかりである。まったくもって楽しい人達なのだ。そんな私もしっかりビールとおつまみを取り出した。中でも山ひとすじさんが取り出したのは、何と幻の名焼酎、「なにみてござる」であった。ええっ、31年前のもの!?それって私が小学生の頃に造られたものではないですか!!いきなり当時にタイムスリップしてしまいそうになる。びっくりしている横で水流さんが無造作に取り出したものは、なな、なんと氷!!しかもでかい氷だ。よくぞここまで担いでこられたものだ。感謝感激。その氷をカチ割ってそれぞれのカップに注ぎ全員で乾杯だ。そぼ降る雨を避けて木陰に陣取って、頭上にはそれぞれの傘を枝にかけ楽しい宴会が始まった。他に通る登山者も少なく楽しい歓談の声が辺りに広がっていった。私の登山の一ページがまたひとつ彩られたのは言うまでもない


水流渓人・ゆう

扇ガ鼻山頂での記念写真

「なに見てござる」を片手に、
山ひとすじの嬉しそうな顔
しげさん
イワカガミ

無事下山した一行
 下山後はゆうさんお勧めの温泉で冷えた体を温めていく。そして名水をいただいたやっさんの貸し別荘、星座にお邪魔することにした。やっさんはお留守だったものの、お母さんがおられて歓迎していただいた。しっかりコーヒーまでご馳走になり、しっかりくつろいで帰ったのである。やっさん、この場をお借りしてお礼申し上げます。
 今回の山行は天候の不安もさることながら、ミヤマキリシマが虫によって、花が食い荒らされていると聞いていたので不安なものがあった。幸いなことに扇ヶ鼻周辺のミヤマキリシマは、それほど心配していたほどではなく安心した。平治岳は茶色く変色するほどひどかったらしいので、扇ヶ鼻はまだまだ良いほうであろう。岩井川岳へと下る途中でその虫を見ることが出来た。ミヤマキリシマにしっかり食らい付いている。人間の目から見れば害虫(人間にとってミヤマキリシマの観賞を邪魔する)である。せっかくの花を食い物にしているにっくき害虫だ。でもその虫は必死で食べている。子孫を後世に伝えるために・・・。ミヤマキリシマだって必死である。後世まで生き残っていかねばならないのだから・・・。そしてそこには自然の法則が働いている。そんな決死の虫対植物の戦いの現場を私達は目の当たりにしているのだ。近年は特に虫の異常発生が多いようである。その害虫大発生の原因が私達人間にあるのか、詳しいことは私にはわからない。単なる大自然のサイクルの一つなのか、中には虫の天敵である小鳥がカラスに追われていなくなったとの説とも聞く。そしてその原因はカラスの餌になるゴミを山に残してくる人間らしい。それが真実とするならば実に悲しいことである。私達人間はもっと謙虚にならねばならないのだ。そっと静かに自然に山に遊んでもらっているという気持ちで接していきたいものである。今回は感動とそして自然について考えさせられる山旅となった。